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大阪地方裁判所 昭和62年(ヨ)4393号 決定 1987年11月18日

申請人

コスモポリタン株式会社

右代表者代表取締役

池田保次

右申請人代理人弁護士

中谷茂

村木茂

山口勉

被申請人

株式会社タクマ

右代表者代表取締役

福田順吉

右被申請人代理人弁護士

木崎良平

門前武彦

米田実

辻武司

松川雅典

四宮章夫

田中等

田積司

米田秀実

主文

本件仮処分申請を却下する。

申請費用は申請人の負担とする。

理由

第一申請の趣旨

被申請人が昭和六二年一一月九日の取締役会決議に基づき、現に手続中の記名式額面普通株式一、六〇〇万株の発行を仮に差止める。

第二申請の理由の要旨

一被申請人は資本金三二億二、三〇〇万円発行する株式の総数二億五、七八四万株、発行済株式総数六、四四六万株(一株の額面額金五〇円)の株式会社である。

二申請人は被申請人の株式を昭和六二年九月三〇日現在で二、〇八六万四、〇〇〇株を保有する株主であり、被申請人の発行済株式総数六、四四六万株の三二、三六%に該当する株式を保有している。

三被申請人は昭和六二年一一月九日取締役会を開き、左記のとおり、第三者割当による新株(以下「本件新株」という。)発行の決議(以下「本件取締役会決議」という。)をした。

発行新株数 額面株式一、六〇〇万株

割当方法 発行する株式を左記会社一五社に次のとおり株式を割当てる。

株式会社住友銀行 一五〇万株

株式会社協和銀行 同右

日本生命保険相互会社 同右

東京ベンチャーキヤピタル株式会社

一四〇万株

株式会社北海道拓殖銀行 一二〇万株

株式会社太陽神戸銀行 同右

株式会社三井銀行 同右

株式会社三和銀行 同右

田熊プラント株式会社 一〇〇万株

株式会社第一勧業銀行 八〇万株

住友信託銀行株式会社 同右

株式会社日本長期信用銀行 同右

株式会社滋賀銀行 七〇万株

株式会社三菱銀行 同右

株式会社東海銀行 五〇万株

発行価額 一株につき金六八〇円

払込期日 昭和六二年一一月二五日

四ところで、本件新株発行は不公正な価額による発行で、株主以外の者に対する特に有利な発行価額をもつてする新株発行であるにもかかわらず、商法に定められた手続きがなされておらず、法令に違反している。

1  本件新株発行価額は一株につき金六八〇円であるが、本件取締役会決議がなされた直前である昭和六二年一一月七日時点の被申請人の株式の終値が一株につき金一、五二〇円(同日の取引高は九九万四、〇〇〇株であつた。)であり、時価の比率で算出すれば44.7%にしかすぎず、明らかに株主以外の者に対する有利な発行価額そのものである。

なお、株式の公正な発行価額は、二つの基準によつて決定されなければならない。

一つは「価額決定にあたつて発行価額決定前の当該会社の株価、右株価の騰落習性、売買出来高の実績、会社の資産状態、収益状態、配当状況、発行ずみ株式数、新たに発行される株式数、株式市況の動向、これらから予測される新株の消化可能性等の諸事情が客観的資料に基づいて斟酌され、価額決定のためにとられた算定方法が合理的であるということができ」ることであり、他の一つは「発行価額が価額決定直前の株価に近接している」ことである。

本件新株発行価額は右「価額決定直前の株価に近接している」という基準に合致せず、したがつて、公正な発行価額とは到底いえないものである。

2  そして、株主以外の者に対し、特に有利な発行価額をもつて新株を発行すべきときは、右有利に発行する事由について、取締役会で決議が必要である(商法二八〇条の二第二項八号)が、本件取締役会決議においても、右有利に発行する事由につき決議されておらず、単なる新株発行の決議しかなされていない。

3  さらに、株主以外の者に対し、特に有利な発行価額をもつて新株を発行する場合には、被申請人は株主総会を開催して、株主以外の者に対し、特に有利な発行価額をもつて新株を発行することを必要とする理由を開示し、その株主総会で商法三四三条に定める特別決議を必要とする(商法二八〇条の二第二項)が、右決議のための株主総会の開催は全くなされていない。

五また、本件新株発行は次のとおり著しく不公正な方法による株式の発行に該当する。

被申請人が今回予定している新株発行は資金調達の必要性からなされるものではなく、その狙いは申請人が被申請人に対して有している持株比率の低下にあることが明らかである。すなわち、

1  被申請人は今回、金一〇八億八、〇〇〇万円の資金調達が必要であるとして、本件新株発行を予定している。

2  しかしながら、昭和六二年度の大蔵省印刷局発行の被申請人の有価証券報告書において、被申請人は資金調達の必要な額として金一億三、〇一一万四、〇〇〇円をあげているのみであり、今回予定されている資金調達金額一〇八億八、〇〇〇万円とは、余りにかけ離れた数字である。

3  そして、被申請人は本件新株発行の方法として上場一部会社としては非常にまれな第三者割当を採用している。

通常、第三者割当による新株発行を行うねらいは、資金の調達にあるのではない。

資金調達を真に必要とする場合は、公募発行によるものである。

第三者割当のねらいは、取引先の拡大ないし取引先との緊密化にある。

今回の引受先をみると右の趣旨の必要は全くない。

けだし、今回の新株引受人は、金融機関と子会社のみであり、既に被申請人を支える株主(ないし株主の子会社)となつているものにすぎない。

又、今回の新株の引受先がすべて被申請人の株主であり、被申請人は筆頭株主を除外し、被申請人の意のままになると考えられる特定の株主に新株を割当てているものである。

4  被申請人が資金調達をする必要があるのであれば、本件新株発行の割当を受けた第三者は一五社中の一四社が金融機関関係会社であり、現在において、長期或いは短期の貸付をしており、従前通り右第三者割当の第三者が被申請人に対し貸付すれば、資金調達は容易であり、何らの問題は生じない。また、被申請人は、第三者割当の第三者の有価証券を所有しており、右有価証券を売却すれば、資金調達は容易である。

5  申請人は被申請人に対し、商法二三七条二項に基づき、大阪地方裁判所昭和六二年(ヒ)第二七三号株主総会招集許可申請事件を提起し、現在係属審議中である。

被申請人は、現在、臨時株主総会を開催すれば、出席議決権の過半数をとれず、被申請人の発行済株式総数を六、四四六万株から八、〇四六万株に増大させることによつて、臨時株主総会において出席議決権の過半数をとろうとしているのであり、このことは、被申請人代表取締役福田順吉も、露骨に認めているところである。

六前記四及び五のとおり、本件新株発行が法令に違反し、または著しく不公正な方法によるものであるので、申請人は被申請人に対し、本件新株発行差止の訴を提起すべく準備中であるが、払込期日が昭和六二年一一月二五日であり、右期日までに本案裁判を確定させることは不可能である。

また、本件新株発行の払込期日が到来して、右新株を割当てられた引受人が払込を済ませて効力が発生した後は、差止請求自体が無意味となる。

そればかりか、一株の引受金額が金六八〇円という時価と比して著しい低価での第三者に対する有利発行での本件新株発行は、被申請人の発行済株式総数の32.36%たる二、〇八六万四、〇〇〇株を有する申請人にとつて、一挙に株価が低下して巨額の損害を与えるのみならず、他の被申請人会社の株式を有する株主に対しても、甚大な損害を与えることは明らかである。

七よつて、申請人は本件新株発行の差止を求めて本件仮処分申請に及んだ。

第三被申請人の答弁

一申請の理由の要旨一乃至三の各事実を認める。

二同四の冒頭部分を争う。

1 同四の1の事実中、本件新株発行価額が一株につき金六八〇円であること、昭和六二年一一月七日の被申請人の株式の終値が一株につき金一、五二〇円であり、同日の取引高が九九万四、〇〇〇株であつたことを認め、その余の点を否認する。

2 同四の2を争う。

3 同四の3を争う。

三同五の冒頭部分を争う。

1 同五の1の事実を認める。

2 同五の2の事実中、有価証券報告書において、被申請人が資金調達の必要な額として金一億三、〇一一万四、〇〇〇円と記載している事実を認める。

ただし、これは一般的な記載方法に従い、極く短期的な計画のみを掲げているにすぎない。

3 同五の3を争う。

4 同五の4の事実中、本件新株発行の割当を受けた第三者は一五社中の一四社が金融機関及びその関係会社であり、現在において、内一社を除き長期或いは短期の貸付をしている事実を認め、その余は争う。

5 同五の5の事実中、申請人が被申請人に対し、大阪地方裁判所昭和六二年(ヒ)第二七三号株主総会招集許可申請事件を提起し、現在係属審議中である事実を認め、その余は争う。

被申請人の発行済株式のうち議決権のある株式総数は六、三九二万株であり、その50.46パーセントにあたる株式は被申請人の方針に賛同し、被申請人を支持する株主が保有しているものである。

四同六及び七を争う。

第四当裁判所の判断

一本件疎明資料によれば、被申請人が申請人主張のとおりの株式会社であること、申請人が被申請人の株式を昭和六二年九月三〇日現在で二、〇八六万四、〇〇〇株を保有する株主であり、被申請人の発行済株式総数六、四四六万株の32.36%に該当する株式を保有していること、被申請人が昭和六二年一一月九日取締役会を開き、申請人主張のとおりの本件新株発行の本件取締役会決議をしたことが疎明される。

二申請人は本件新株発行が、株主以外の者に対する特に有利な発行価額をもつてする新株発行であるにもかかわらず、商法に定められた手続きがなされていない旨主張するので、以下検討する。

1 商法二八〇条の二第二項にいわゆる「特ニ有利ナル発行価額」とは公正な価額との比較において論ぜられるわけであるが、普通株式を発行し、その株式が証券取引所に上場されている株式会社が、額面普通株式を株主以外の第三者に対していわゆる時価発行をする場合の発行価額は、発行価額決定前の当該会社の株式価格、右株価の騰落習性、売買出来高の実績、会社の資産状態、収益状態、配当状況、発行ずみ株式数、新たに発行される株式数、株式市況の動向、これらから予測される新株の消化可能性等の諸事情を総合し、かつ、発行価額決定直前の株価に接近していることが必要であり(最高裁昭和五〇年四月八日第三小法廷判決・民集二九巻四号三五〇頁)、具体的にはこれらの諸事情を前提として決定される価額が公正な価額ということになる。

そして、株式が市場において取引されている場合には、原則として市場価額が右公正な価額の反映と考えられるから、新株の発行を決議した時点における株価を中心として新株が発行された場合において予想される株価の変動等の事情を加味して発行価額を決定すればそれが公正な価額ということができる。しかし、右の株価はしばしば当該株式が投機の対象になる等により、必ずしも公正な価値を反映しない場合があり、このような形で形成された株価は、公正な価額を決定するうえでの基準たり得ず、これとの比較において発行価額が公正か否かを決定することはできないというべきである。

(一) ところで、前記一で認定したとおり、本件取締役会決議の直前である昭和六二年一一月七日の被申請人の株式の終値は一株につき金一、五二〇円であつたが、本件疎明資料によれば、

(1) 被申請人の株式の市場価格及び出来高の推移は別紙のとおりであり、昭和六二年二月に出来高が増加し、株価が急騰するようになり、同年三月になると出来高がさらに増加し、株価が高騰し、一株につき金一、八五〇円、同年四月に金一、九四〇円、同年五月に金二、二二〇円となり、その後同年九月までは一株につき金一、五〇〇円から金一、七〇〇円の間を推移するようになつたこと、

(2) 申請人は昭和六二年三月二〇日、一度に八〇〇万株の名義書換をなし、同年三月末日に約一、二三四万株、同年八月末日に約一、五三〇万株、同年九月末日に約二、〇八六万株にそれぞれ買い増して取得し、その名義変更をしたこと、

以上の事実が疎明されるところ、これらの各事実によれば、他に被申請人の業績の向上等株価高騰の原因となる特段の事情を疎明する資料がない本件にあつては、前記被申請人の株価の急騰の主たる原因は申請人による被申請人の株式買占めにあつたものと推認するのが相当である。

(二)  したがつて、前記の被申請人の株式の終値の一株につき金一、五二〇円という価額は申請人の買占めを主たる原因として形成されたものといわざるを得ず、このようにして形成された株価は本件取締役会決議の直前のものであつても、本件新株の発行価額を定めるうえで基準たり得ないことから、前記一株につき金一、五二〇円という価額との比較によつては、本件取締役会決定された一株につき金六八〇円という価額が特に有利な発行価額と断定することはできない。

2  次に、本件疎明資料によれば、被申請人が本件新株の発行価額を金六八〇円と定めた経緯は次のとおりであることが疎明される。

(一) 被申請人は本件新株の発行価額を決定するにあたり、申請人の大量買占めの影響を受けない時期における市場価額が被申請人の企業としての客観的価値を反映しているものと判断し、昭和六二年三月二〇日以前の六か月間の各取引日の終値の平均値を出したところ、一株あたり金五八四円四八銭であつたこと、

(二) 次に、前記価額五八四円四八銭を基礎として、もし申請人の買占めによる影響を受けなかつたとすれば、発行価額決定の直前には、市場価格はいかなる水準に達したであろうかを推計することにし、市況の伸び率として、日経平均株価の伸び率を用いて、前記価格算出の対象とした六か月間(昭和六一年九月二一日から昭和六二年三月二〇日)の日経平均株価の平均値と、直近一週間(昭和六二年一一月二日から同月七日)の日経平均株価の平均値とを比較したところ、1.2227倍の伸び率であつたことから、これを前記価格五八四円四八銭に乗じて得た七一四円六四銭を発行価額決定の直前におけるあるべき妥当な市場価格、すなわち株式市況を考慮したうえでの被申請人の企業としての客観的価値であると結論したこと、

(三) そして、証券取引所に上場されている株式会社の新株発行価額は、決定時における株価の一〇%ないし一五%低い価額で決められるものが多く、これが発行価額の公正さの一応の目安とされているとの慣行に従い、そのようなディスカウント率の範囲内でその率を五%とし、六七八円九〇銭を算定し、結局、一株の発行価額を六八〇円と決定したこと、

(四) さらに、被申請人は、

(1) 日経平均株価など他の市況の他の伸び率を基準として推定株価を算出し、

(2) 類似会社あるいは類似業種の株価と比準して株価を算出し、

(3) 昭和六二年一一月七日の平均純資産倍率及び平均株価収益率に基づき株価を算出し、

これらを一応の目途として本件新株の価額を決定したこと

以上の事実を一応認めることができ、これらによるも本件新株の発行価額をもつて、特に有利な発行価額ということはできない。

3  右のとおり、本件新株の発行は特に有利な発行価額をもつてするものとはいえず、他に有利な発行価額であることを疎明する資料はなく、結局、法令に違反した新株発行であるとはいえない。

三次に、申請人は本件新株発行は著しく不公正な方法による株式の発行に該当すると主張するので、判断する。

1(一)  申請人が被申請人の株式を昭和六二年九月三〇日現在で二、〇八六万四、〇〇〇株を保有しており、被申請人の発行済株式総数六、四四六万株の32.36%に該当する株式を保有していることは前記認定のとおりであるから本件新株一、六〇〇万株が発行されれば申請人の持株比率が29.93%に低下することは計算上明らかである。

(二)  そして、本件疎明資料によれば、

(1) 申請人は被申請人に対し、商法二三七条二項に基づき、当庁昭和六二年(ヒ)第二七三号株主総会招集許可申請事件を提起し、現在係属審議中であること、

(2) 被申請人の方針に賛同し、被申請人を支持する株主は被申請人の主張によるも50.46パーセントで、過半数をわずかに超えているにすぎないこと、

(3) 本件取締役会決議後の新聞記事には本件新株発行のねらいが申請人の持株比率を低下させることにある旨の記載がみられ、一般には本件新株発行が申請人の被申請人の株式買占めに対抗するためになされたと受けとめる傾向にあることが一応うかがえること、

(4) 後記のとおり、本件新株発行の目的が被申請人は構造改善のために必要な資金を調達することにあると認められるものの、その基本となる構造改善総合計画がようやく昭和六二年七月二四日の取締役会決議で確定したものであること、

以上の事実が疎明されるところ、これらの各事実によれば、被申請人は大株主となつた申請人の相対的地位の低下を図り、本件新株発行を決議したのではないかとの疑いを全く否定することもできない。

2(一)  しかしながら、本件疎明資料によれば、

(1) 被申請人は昭和六二年七月二四日開催された取締役会において、構造改善総合計画として、「設備投資計画、開発投資計画および海外投資計画基本方針の件」を付議し、承認可決し、以後右方針に基づく細部の実施計画及びその資金の調達方法の計画、検討が続けられてきたこと、

(2) 右総合計画の直接投資額の合計額は金八三億五、〇〇〇万円に上り、当該計画の実施により年間売上高金八〇億円、経常利益八億七、一〇〇万円を見込み得るのであるが、右売上高の増加に伴いその三五パーセントに相当する金二八億円の運転資金増をもたらすことになり、かくして、右総合計画実現のために要する総投資額は、合計金一一一億五、〇〇〇万円に上るものであること、

(3) 右計画について、被申請人は昭和五九年以降をとつてみても、頻繁に専務会、取締役会等を開催し、構造改善のための短期、中期、長期の各投資計画を逐次審議し、各個別の合理化施策を実施すると共に、今後の構造改善総合計画の確立に向けて努力してきたものであること、

(4) また、被申請人は国内外の同種企業に比し、著しく、自己資本比率が低く、その技術力等に対する信用により、右の点を補つてきたが、過少資本であることは営業上極めて重大な阻害要因となるに至つており、自己資本比率を三五%近くに引上げることも、本件新株発行の重大な目的であること、

(5) なお、本件新株発行は第三者割当の方法により行われているが、まず、株主割当の方法による新株の発行は、増資取扱内規に定める、直前決算期の一株当り配当金が金五円以上であること、増資後も一株当り金五円以上の配当金が維持し得ること等が必要であるが、被申請人の昭和六二年三月期の配当金は一株当り金三円であり、右条件を充足しておらず、株主割当の方法による新株の発行は、これを行うことができず、次に、公募増資を行うためには、増資取扱内規及び自主ルールに定める条件を充たす必要があるが、被申請人は、右に述べた通り、増資取扱内規の条件すら充足しておらず、公募増資もこれを行うことができず、結局第三者割当の方法以外には方法がなかつたこと、

以上の事実が疎明され、これらの各事実によれば、被申請人には具体的に資金需要が存し、その調達の方法として新株発行によつたこと、その発行を第三者割当としたことについてそれなりに合理的な理由があつたものというべきである。

3  右1及び2によれば、被申請人が申請人の株式保有を嫌つて本件新株を発行したのではないかとの疑いを全く否定できないにせよ、それがもつぱら申請人が被申請人に対して有している持株比率の低下させる意図でなされたものとはいえない。そして、右の意図が多少なりとも存していたとしても、本件新株発行につき合理的理由の存する以上それが本件新株発行を決定づける理由としては稀薄であるといわざるをえず、結局本件新株発行が著しく不公正な方法によるものということはできない。

四(結論)

以上のとおりであるから、申請人の本件仮処分申請はその余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないので、これを却下することとし、申請費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官佐野正幸)

(株)タクマの株価(月間高低値)出来高推移表

年月

高値

安値

出来高(千株)

年月

高値

安値

出来高(千株)

59年 1月

268

236

3,531

61年 1月

353

290

12,533

2

305

245

12,247

2

379

340

15,158

3

273

236

1,765

3

681

340

94,381

4

240

229

1,048

4

577

426

19,284

5

240

221

849

5

711

535

58,144

6

259

219

2,785

6

785

650

40,187

7

264

234

2,638

7

795

550

20,601

8

256

230

2,622

8

650

485

3,618

9

241

221

862

9

549

400

2,798

10

234

220

1,242

10

519

402

4,905

11

248

226

1,960

11

540

447

9,653

12

279

238

4,360

12

535

432

5,768

60年 1月

255

238

1,756

62年 1月

555

413

12,588

2

257

240

1,045

2

864

491

25,579

3

266

241

2,038

3

1,850

825

72,304

4

304

250

10,513

4

1,940

1,570

16,095

5

343

275

19,720

5

2,220

1,560

13,944

6

310

278

2,835

6

2,100

1,500

11,250

7

326

282

5,270

7

1,840

1,510

5,274

8

340

305

6,120

8

1,780

1,500

3,986

9

354

305

6,945

9

1,700

1,550

3,442

10

315

269

3,220

10

1,670

880

5,522

11

294

265

2,421

11月 7日

1,620

1,250

3,892

12

320

280

4,044

まで

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